がん末期の方の「介護保険が利用できない」問題
がんの末期になっても、在宅で生活を希望する方たちがいる。国立がん研究センターが、がん患者の終末期の療養生活の実態について、遺族を対象に行った全国調査※によれば、患者の死亡場所は多い順に、病院が2万5436人(47.0%)、自宅が1万8687人(34.5%)、ホスピス・緩和ケア病棟が7220人(13.3%)、介護施設・老人ホームが2824人(5.2%)となっている。がん患者がその最後に在宅を選択される方は意外と多い。そして、患者が死亡前1カ月間で日常生活動作に何らの介助が必要だったと回答した割合は78.4%というデータも示されている。
ところが、こうした在宅で末期を迎えるがんの患者さんで、必ずしも介護保険にたどり着けない人たちが一定数いるといわれている。終末期になって、介護認定申請をしてもその認定が間に合わないケースや、がんと診断されている方でも、比較的元気に推移している時期があり、認定申請すると要支援と認定される場合があり、その後急性増悪の時期を迎え、介護サービスが必要となり、改めて変更申請をするケースもある。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省は令和6年5月31日 「がん等の方に対する速やかな介護サービス提供について」という事務連絡を通知し、「特にがんの方等のうち、急速に病状が変化する方については、要介護認定(新規、区分変更)手続き及び速やかな介護サービス開始について特段の配慮が求められます。」としている。確かにこうした厚生労働省の意向を受けて、がん末期の方の介護認定に一定の改善が図られているが、現場で働くケアマネジャーとしては、さらなる改善を望みたいと考えている。そのために具体的に次のような改善が必要だと考えている。
1、介護認定申請日、その日のうちに認定調査を
介護認定が成立するためには、最低認定調査を済まさねばならない。そのために迅速な認定調査が必要である。ケアマネジャーが緊急に特殊寝台等のサービスを導入したとしても、認定調査が済んでいないと、介護保険が成立しないこととなり、その結果利用したサービスの費用が全額自己負担となってしまうこともある。先の事務連絡でも「がん等の方など、迅速な対応が必要と判断される方から申請があった場合、同日のうちに認定調査員が認定調査を実施する」 と明確に示しているように、保険者がこうした趣旨に基づき迅速な対応することが望まれる。
2、医療機関の協力が必要
末期の方が「在宅で過ごしたい」との意向で退院される場合、 退院後に申請すると認定が間に合わず、介護サービスが利用できないということがある。厚労省事務連絡でも、入院中から医療機関とケアマネが連携し、退院前に申請することが診療報酬上も評価されると明記されている。したがって、 必ず病院で介護認定申請を済ませてから退院するよう、医療機関において対応されることが求められている。
3、まず特殊寝台の利用
我々ケアマネジャーの経験では、がんの末期の方が在宅に帰って利用されるサービスの中で、緊急に対応を考えるのが特殊寝台、その付属品、褥瘡予防具である。(訪問看護はこの際医療保険での利用となる)。特殊寝台等の利用は原則要介護2以上であるが、厚労省の事務連絡(平成22年10月25日)では、 がん末期で急速な状態悪化が見込まれる場合、要支援・要介護1でも特殊寝台等の貸与が可能とされている。しかし保険者との協議、手続きのために時間を要することがあり、緊急に特殊寝台の利用を開始したにもかかわらず、保険者との協議、手続きが遅れると、ご本人の苦痛増大・家族の介護負担増大につながることとなる。がんの末期の方の特殊寝台等の緊急利用に対し、迅速な貸与が可能となる運用の改善が望まれまる。
4、がん末期の方が要支援と認定になったら介護予防なの?
がん末期と診断されている方でも、比較的元気に推移している時期があり、こうした方が認定申請すると要支援と認定される場合が少なくない。その後、急性増悪の時期を迎え、改めて変更申請をするケースがある。認定調査の一次判定で要支援と認定されたとしても、こうした方に介護予防という趣旨のサービスは適切ではないことは言うまでもない。
また、急に状態が悪化し介護サービスが必要になって変更申請をすることになり、介護認定に伴う一連の対応が短い期間に繰り返すという無駄を生じることとにもなる。こうした問題を是正するために、主治医の意見書に「がん末期等」の記載があれば。認定審査会の判断で、必要なサービスを指定したり、要介護2以上の認定とする等の配慮が行われることが望ましいと考えている。