介護支援専門員の更新制の廃止と研修
現在介護保険の改定に関して社会保障審議会で様々な議論が行われている。その中で多くのケアマネジャーが注目しているのが介護支援専門員の更新制の廃止である。これまで介護支援専門員は5年に1回更新研修を受けることによりその資格の更新ができていた。この更新研修と資格の更新を切り離し、更新制を廃止しようというものである。このことはかねてから更新制はやめるべきだと主張してきた者からは大きな前進と評価することができる。
ただし、「更新の仕組みは廃止したとしても、専門職として、新たな知識と技能の習得に継続的に取り組んでいくことの重要性は変わるものではなく、定期的な研修の受講を求める」と研修はあくまで義務だとしている。そのために事業所に介護支援専門員の研修を義務付けるといったことも言われているようだが、その辺がどのように変わるのか、場合によっては今までとあまり変わりないようなことになるのか。
それはともかくとしてもその研修のあり方の改善も重要であると考えている。国はこの段階でこれからの研修内容については「可能な限り縮減することを検討」としており「都道府県が実施する研修の内容の改善をはかる」としている。其れ以上のことは示されていないが、相変わらず国が定める内容の研修を全国で統一したカリキュラムに基づいて都道府県が行うという従来のお仕着せの研修が行われるとすれば、多少時間数が減ったとしても、とても改善とはいえないであろう。現場の介護支援専門員としては、何が何でもケアマネジャーの仕事を続けるために受けなければならない、そうした研修に受ける側の主体的な学びは生まれにくい。そこにあるのはひたすら耐えて時間をやり過ごすことに意味を見出すことである。こうしたお仕着せの研修にどれほど意味があるのであろうか。同時にそこではケアマネジャーにこれだけの知識を持たさねばならないという、現場のケアマネジャーを信頼していない国の姿勢をうかがい知ることができる。こうした介護支援専門員に義務付けられた研修制度はむしろ、専門職としても主体的な研修意欲を削ぎ、長い目で見れば質の低下すら危惧される。
専門職である限りその仕事を遂行するうえで必要な知識、スキルを身に着けることは不可欠である。しかしそのやり方はあくまで個々の専門職の主体的な努力で行われるものだと考えている。専門職の研修は義務教育ではない。自らの専門職としての知識や能力の到達点を理解したうえで、あくまで自主的に研修すべき内容や課題、身に着けるべきスキル等を選ぶことが必要ではないか。
新しい研修に関して次のような方式が考えられると思う。国は大枠としての必要な研修項目を示し、それぞれの介護支援専門員はそれらの研修項目に該当するいろんな学会や、職能団体が主催する研修会、その他の研修会を自分で選んで受講する。それを点数で評価し一定の点数の取得を義務付けるという、現在でも多くの学会や専門職がすでに行っている方式である。少なくとも今の、特定の団体に研修を丸投げして行うというやり方より費用も少なく、健全であるといえる。