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つぶやき

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ケアマネのつぶやき

インフォーマルサポートの落とし穴

 その日、朝早くから一人暮らしのOさんからケアマネに連絡があった。37度の微熱があるので今日のデイサービスを休むとのことだった。これまでほとんどデイサービスを休んだことのないOさんの事、気になったケアマネは、昼過ぎにOさんの隣に住むHさんに様子を見てきてくれるように頼んだ。Hさんは近所の商店に努めているが、いつも隣の一人暮らしのOさんの事を何くれとなく気にかけてくれており、「Oさんのことなんかあったらいつでも言ってね」と声をかけてくれており、ケアマネに取って心強いインフォーマルなサポーターであった。折り返しHさんからかかってきた電話は「39度を超える発熱があり咳もひどい」というものだった。早速Oさんを訪問したケアマネは、すぐに近くのかかりつけの医院に受診してもらうこととなった。その結果、コロナウイルスの感染ということが判明し必要な手当てが行われた。

ところが問題は1週間後、この間のお礼にと思いケアマネがHさん宅を訪ねると「実は私もコロナに感染し三日仕事を休みました」とのこと。HさんはそのことでOさんやケアマネを責めるということはありませんでしたが、ケアマネとしては、あの時自分が「様子を見に行ってきて」と言わなければと反省する思いが強く、せめてもと後日、菓子折りをもってHさんのお宅をお詫びのための訪問をした。この間のコロナウイルスの嵐の中でも一度も感染することもなく、コロナウイルスにはめっぽう強いケアマネの苦い経験であった。

 インフォーマルな支援をめぐってもう一話。Kさんは要支援2の認定を受けているが生活はほぼ自立しており一人暮らしをしていた。ただ年齢とともに足腰の衰えがあり、外出が困難でゴミ出しや買い物に支援が必要になっていた。自分で頑張らなければという思いの強いKさんはヘルパーの支援を望まなかったため、ボランティア登録をしていた同じ町内のPさんに買い物とゴミ出しの支援を依頼することとなった。ケアマネはその後の様子をモニタリングしていたが、Kさんはボランティアの支援に満足して「ありがたい」と語っていた。ところが半年を過ぎたころ、突然Kさんの娘さんからケアマネに電話がかかってきた。「ボランティアに来てもらっているようですが、母はお礼のためと言い、物を渡したり、お金を払っている様子。いったいどうなっているの」とかなり強い口調で話された。ケアマネは普段はお話しすることもなかった娘からの突然の電話に戸惑いながらKさんを訪問した。娘さんからの話を伝えると「いろいろお世話になっているのでお礼の気持ちを伝えただけ。お世話になったらお礼するのが当たり前でしょ」と。

 娘さんの言い分はもっともなこと。かといってKさんの長年の人との付き合い方、生活信条を否定して説得するのも難しい。そこで考えたケアマネがKさんに提案したのは、ボランティアのPさんは家庭の事情で来れなくなるということ、その代わりにヘルパーさんに来てもらうことでこれまでの買い物やゴミ出しを行ってもらうこと。Kさんは意外とあっさりこのケアマネの提案を了解してくれ事態は一件落着ということとなった。

 ケアマネは要介護状態にある利用者の生活を支えるために介護保険のサービスはもちろん様々な人、モノ、金といった資源を駆使してその仕事を行う。デイサービスやヘルパーさんといった介護保険サービスはこうした人々の生活を支える重要な役割を果たすが、それだけで利用者の生活を支えることは難しい。そこでインフォーマルなサービスを見つけ出し利用者の生活ニーズを充足させる。インフォーマルサービスの中で隣近所の人やボランティアの役割は極めて大きいし利用者にとっても受け入れやすいものであるが、同時に今回のケースのように意外な落とし穴もあるのだ。

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