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ケアマネのつぶやき

どうしようもないこと、そしてネガティブケイパビリティ 

ケアマネジメント(対人援助)の現場はどうしようもない現実に満ち溢れている。

誰しもが支援が必要だと考えている、ゴミ屋敷の中に暮らす高齢者がいる。しかし、いろんな人の説得にもかかわらず、他者の介入を一切拒否する、こうした高齢者に対し、ケアマネジャーはこの人の過去に何があったのだろうかと推測を働かすが、とりあえずどうしようもない現実がある。足腰の衰えで家事の遂行が困難になっている高齢者に、訪問介護サービスを勧めるが、基礎年金の4万円程度しかないことを知っているケアマネジャーは、生活保護の利用を勧める。国の世話にはなりたくないと、その高齢者の意志は強固である。取りあえずケアマネジャーは週1回のサービスというケアプランを作成する以外に手立てを持っていない。住み慣れた家と暮らしを大事にしてきたし、最期までとケアマネジャーと相談してきた高齢者がいた。都会に暮らす息子には、「年寄りをいつまで一人でほっておくの」という親戚からのプレッシャーがかかる。息子はケアマネジャーに施設探しを求める。施設入所をと迫る息子の意見に、口を閉ざして語らぬ高齢者に対し、ケアマネジャーは何を語ることができるのであろうか。

とりあえず「どうしようもない」現実を目の前にして、真面目なケアマネジャーは悩むことになる。それは「仕方のない」こととして、そこで思考停止をしてしまいがちになる。でもそれは対人援助にかかわる専門職として責任放棄になるのではとの自負もある。とりあえず困難事例とラベリングをして様子を見ることとなる。

 そんなケアマネジャーに必要なことは、ネガティブケイパビリティという力ではないかと思っている。ネガティブケイパビリティについて、帚木蓬生は次のように説明している。「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」「事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいられる能力」※1

 ケアマネジメントは単にサービスを組み合わせて提供するだけでは済まない場面に直面することは少なくない。世の中にはどうしようもない、解決しようのないことは星の数ほどある。そうして現実生活の中で展開されるケアマネジメントもその例外ではない。そこで求められるのは、現実のどうしようもない事態を直視しながら、モヤモヤした気持ちに耐えじっと待つ、そして熟した柿の実がポトッと落ちるように、必ずいつかは状況が変化し、事態が動くことを信じて。ただし、高齢者にとってその変化が必ずしも好ましいことばかりではないこともあるのだが。

今の世の中は、ネットで検索すれば簡単に回答を得ることができる。書店でも、こうすれば簡単に解決します、といったハウツー本にあふれている。学校教育ではいかに早く問題解決をし、回答を見出すかという訓練が行われている。回答のない不安な中で時間を過ごしていくことは、現代人にとってあまり得意なことではないのかもしれない。いずれにしても、そうしたどうしようもない現実に対し、高齢者に寄り添いながら、耐えて持つというネガティブケイパビリティは、ケアマネジャーにとって必要不可欠な能力なのだという確信はある。

※1「ネガティブケイパビリティ」帚木蓬生著 朝日新聞出版)

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