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つぶやき

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ケアマネのつぶやき

注文の多い高齢者

Bさんは独り暮らしで87歳になる。米寿と言われる歳を迎えるが、「誰も祝ってくれないの」とケアマネジャーに今の暮らしを託つ(かこつ)。亡き夫は国家公務員で、借家や駐車場も所有していたこともあり暮らしに困ることはない。ただし、お友達と言える人の姿を見ることはほとんどなかった。そんなBさんがケアマネジャーを悩ますのは体調の不良の訴え、病気探しとも思える医療機関めぐりと医師への不満である。こうした行動はドクターショッピングと言われるそうだが、整形外科を受診して眼の不調を訴えるBさんに同行したケアマネジャーは困惑せざるを得ない。体調の不良を訴えて、ケアマネジャーに救急車を呼んでほしいと電話が入る。「もう助からないかもしれない」という電話に、いつものこととは思いつつ、もし何かがあったらと不安がよぎるケアマネジャーはBさん宅に走る。そして一度訪問すると2時間3時間ととぎれることのないBさんのお話に付き合うこととなる。移動が困難なBさんの生活を支えるため毎日訪問しているヘルパーさんに苦情がはいる。「ヘルパーが冷蔵庫を開けて食事の献立を考えている間に、中の食品が腐った。違うヘルパーにして欲しい。」ヘルパー事業所の責任者は、頭を抱えつつもBさんに付き合うこととなる。 

Bさんには3人の子供がいるが、いずれも県外に暮らしておりめったに母親の家を訪れることはないようである。ケアマネジャーは子供たちにBさんの様子を報告するが、その反応は3人とも「なかなか帰れないので、お世話になりますがよろしくお願いしますと」そっけない答えしか返ってこない。一番下の息子に至っては「忙しいのであまり電話をかけてこないで」と言われる。この家族はこれまでどのように暮らしてきたのか、もし母親に何かあったとき、残された財産は一体どうなるのかと、ケアマネジャーは思わずいらぬ心配をしたりする。

Bさんの姿はジョン・Tカシオポの次の指摘を想起させる。「私たちは進化によって、社会と結びついているときに心地よさをだけでなく安心感も得るようになった。ここで極めて重要なのは、進化の結果、人間は孤立すると居心地が悪いばかりか、身体的な脅威に直面した時のような不安感を抱く。」※ 1

Bさんの体調の不良の原因は社会的孤立なのかもしれない。元々本人の性格やこれまでの生活の中で、家族や地域の知人等との関係が薄かったことが想像される。まだ自分で何でもできていたうちはそれでもよかった。ところが加齢に伴う心身機能の低下は、Bさんに深刻な痛みとして現れているのかもしれない、とケアマネジャーは考える。

ケアマネジャーにとってBさんの孤立、それに伴う孤独感の解消こそが「解決すべき課題」なのであるとすれば、ケアマネジャーのBさんに寄り添う支援とヘルパーの存在は重要な役割を果たしているともいえる。但し、介護保険のサービスだけでは根本的な解決にはならない。まず家族の絆の回復が考えられる。しかし、子供たちの反応から、今すぐに関係性の改善を図ることは困難だと考えざるを得ない。確かに日本ではいまだに「困ったときは家族が頼り」という価値観が根強い。ケアマネジャーもその考え方に縛られている面がある。しかし現実は、単身世帯の増加や都会に住む子供たちと残された老親等「困ったときは家族が頼り」とはならない現実に直面していることも否定できない。

次に地域に親戚、知人がいるかどうか、Bさんのこれまでの発言からは見えてこないが、しかしもともとこの地で生まれているのであるから、なにがしかの縁ある人を探すことは可能であろうと考えている。しかし、Bさんがそうした支援を受け入れるかどうかはわからない。「人は生きてきたように老い、そして死んでいく」という理をケアマネジャー、その経験から知っている。高齢者は長年にわたり積み重ねてきた暮らし方をそんなに簡単に変えることは難しい。

注文の多いBさんに寄り添いながら、その支援にケアマネジャーの悩みは尽きない。

※1(「孤独の科学」ジョン・Tカシオポ

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