深刻な過疎地の介護問題 その2
厚生労働省は人手不足が深刻な中山間・人口減少地域を対象として、ICTの活用も前提に事業所・施設の人員配置基準の緩和などを認める「特例介護サービス」の新類型を創設すること等を決めた。しかし、問題は人材そのものが圧倒的に不足している地域では、基準の緩和で問題が解決するとは到底思えない。むしろ介護現場により大きな負担を強いることになり、逆効果になる可能性さえある。
根本的には現在の介護報酬、特に訪問介護のそれを適正に見直し、過疎地といわれる地域に働く訪問介護員の働きを介護報酬上評価することが何よりも大切だと考えている。この点では「中山間・人口減少地域の地域区分を1級地として、十分な財配分を実施すべき」としている結城康博氏の主張は十分納得のいくものである。
同時に、現在訪問介護事業所が0という市町村が107自治体に上っていると報道されている。こうした地域では「給付の仕組みに代えて、市町村が関与する事業により、給付と同様に介護保険財源を活用し、事業者がサービス提供を可能とする仕組みを設けること」(「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」)といった方法によるサービスの提供が必要な地域もあることが考えられる。
当地域では一定数の訪問介護事業所はあるが、周辺の山間部や海岸部のへの移動に時間を要するという理由で、そうした地域の住民が訪問介護サービスの利用ができないという問題を抱えている。こうした問題の解決のためには、個々の訪問介護事業者の赤字覚悟の善意と努力だけでは困難であり、移動に係る費用に関する自治体の補助等も考えられるべきである。根本的な解決のためには、複数の事業者が連携してそうした地域の訪問を可能にすることを検討すべきだと考えている。ただし、そのためには地域包括支援センター、行政機関等が介入して調整をすることが不可欠である。
これまでも介護人材の不足についていろんな機関や場所で議論されてきた。外国人労働者の就労も一部で進んでいる。しかし問題の根本的解決には程遠い。いずれにしても、人材不足の深刻化が避けられないこうした地域では、現有の人材をいかに有効に機能させ、介護サービスを利用できない地域や人々をなくすかという課題を解決するためには、事業所枠を超えた協働化が必須であると考えている。
問題はどこがその調整役を担うかということである。この点では、長崎県西海市における社会福祉協議会が「コックピット機能」をもって地域全体のサービス提供体制を確保していこうという、民間主導の取り組みも注目される。こうした点は、それぞれの地域の事情により異なったアプローチが考えられるが、いずれにしても行政の何らかの関与は不可欠であろう。
折から、厚労省は「第10期介護保険事業計画の策定に向けた事前準備に関する留意事項について」を発表した。その中では「中山間・人口減少地域のおけるサービス提供体制の確保に関する方策について…略…地域ごとのサービス提供の課題に係る実態を把握し、対応の検討を早期に開始することが重要である。」としている。既に訪問介護サービスを利用できない地域や住民がいるという現実がある。ことは急がなければならない。関係機関、団体、事業所等の協議が一日も早く開始されることを切望する。