どうなるマイナ保険証
――75歳以上の全ての高齢者に資格確認書を交付――
この4月、厚労省はすべての75歳以上の高齢者に資格確認書を交付すると発表した。
当初の政府の計画では、紙の保険証を廃止しマイナンバーカードに一本化するとして、一気にマイナンバーカード取得とマイナ保険証登録を強制していこうと考えていたようである。だが、法律による義務付けなく行えば、憲法違反になるという議論が出て、厚労省は一部方針を変更し、「マイナンバーカードを持っていない人」「マイナンバーカードを持っていても、健康保険証の利用登録をしていない人」に対して資格確認書を発行して、マイナ保険証がなくても医療機関に受診できるようにと一部修正していた。
今回の厚労省の方針転換は、75歳以上のすべても高齢者(後期高齢者医療保険加入者)に資格確認書を発行し、2025年の8月1日以降も医療機関に受診できるようにしたのである。7月に入れば資格確認書なるものが高齢者に送付されてくるのであろうが、マイナ保険証により無理やりマイナンバーカードの普及を図ろうとした拙速な国の対応のほころびが出たということなのだろう。ただし、この資格確認証は2026年7月末の1年間の有効期間とされているものである。いずれにしてもこの8月以降も従来の紙の保険証と同じ資格確認書が使用できることになる。
全国保険医団体連合会は8日、マイナ保険証に関する調査結果を発表した。それによると、本人であることを示すカード内の電子証明書の有効期限が切れていたことで受診できないといったトラブルが増えていると指摘している。
マイナンバーカードのICチップに内蔵された電子証明書には、発行から5回目の誕生日までという有効期限がある、そのため電子証明の更新を忘れると、有効期限が属する月の月末から3か月後の月末が経過した後に、マイナ保険証を使用できなくなるということになる。従来の紙の保険証は有効期間の切れるまでに保険者から送付されていたためこのような心配はなかったが、子供が手続きをしてマイナ保険証を親に持たせている高齢者も多い。こうした高齢者が電子証明の有効期間を管理できるのであろうか。マイナ保険証になると高齢者やケアマネジャーにとっては頭の痛いことがまた一つ増えることになる。
マイナンバーカードを取得した方にポイントを付与するマイナポイント事業は2020年~2023年に実施されたので、2025年から電子証明書の有効期限を迎える方が急増すると言われている。電子証明書の更新忘れによる医療機関での窓口でのトラブルが増えることが今後問題となると指摘されている。高齢者や必要な人には従来の紙の保険証も選択できるようにすべきであると強く思う。